『千一夜物語』公演写真&ストーリー
第1話 『初恋』
「ぬあー!書けない…」とある高校演劇部の合宿。一人の生徒が脚本書きに悩んでいるところへ部員たちが応援にやってくる。
「ちょっと、何にも書いてないじゃん!」
「おお!」「それは!?」「どんな話、どんな話?」
「よし、書くぞ、と思って、シャーペン持った瞬間、…忘れた」
「テメエこの野郎!」
「な、なんとなくは覚えてるんだよ、戦争の話!」
そこへ突如現れたのは、なんと第2次世界大戦中の本物の兵隊。
「ここで貴様等に会ったのも何かの縁かもしれん。だから俺の話を聞いてくれ。そして協力してほしいんだ」
男は戦禍の中で死神の声を聞いたという。
その死神が告げた真実は「あと30分で、お前は死ぬ」―。
そして死ぬ前に、会いたい者に会わせてくれるという。
男が選んだ「会いたい者」、それは―
その死神が告げた真実は「あと30分で、お前は死ぬ」―。
そして死ぬ前に、会いたい者に会わせてくれるという。
男が選んだ「会いたい者」、それは―
「みよちゃん。」
「ぷっ」
「みよちゃんは有名な美人だった。いつも笑顔で、セーラー服が似合って…。 毎週踊りを習っていたのを俺はのぞき見たもんさ。一目でも、あの笑顔が見たくって…」 「つまり、みよちゃんに会いたいばっかりにここに来たんですね?ここにみよちゃんがいると」 「そうだ。死神は確かにそう言った」 |
「ちょっと待って下さい、すっごいズレがあるんですよ。あなたと僕らは違う時代に生まれた人間なんですよ。 今は日本が戦争に負けて、もう60年以上も…」 「…おい。今、何て言った?」 |
日本が戦争に負けることを知ってしまった男。
唯一つ信じてきたものを失い、崩れ落ちる。
それでもなお、縋りつくかのように銃剣を握りしめる。
唯一つ信じてきたものを失い、崩れ落ちる。
それでもなお、縋りつくかのように銃剣を握りしめる。
「…何の為に…何の為に今まで我慢してきたんだ? 何の為に学校をやめて、 何の為にみよちゃんも諦めて、 何の為に、人を、この手で…」 「いや、仕方ないですよ。そういう時代だったし」 |
「…仕方がないって言葉はな、俺が兵隊になる時、みんなでそう言ったさ。 そんな言葉を簡単に使うお前らも、今に俺と同じ目に遭うんだぞ…わかってるのか!? 諦めたらな、死んじまうんだぞ! …お前たちまで死んじまったら、俺達みたいな奴のことは、一体誰が憶えていてくれるんだ…?」 |
生徒たち、かける言葉がない。何かしてあげたい―という気持ちだけが膨らむ。
ふと、一人の生徒が鞄からおにぎりを取り出し、男に差し出す。
ふと、一人の生徒が鞄からおにぎりを取り出し、男に差し出す。
「…米の、握り飯…」 「お腹、減ってない?」 貪るように食らいつく男。
その味に戦争で亡くした母親を思い出し、泣く。 |
見ていた生徒の一人が、突然ひらめく。
そのひらめきとは…
そのひらめきとは…
「兵隊さんとみよちゃんの、結婚式ー!」 「け、けっこん!俺とみよちゃんが!?」 |
生徒の一人をみよちゃんに仕立てて即席の花嫁衣裳を着せ、ドンチャン騒ぎが始まる。
男を喜ばせようと盛り上げながら、自分たちも楽しそう。
それまでずっと強張っていた男の顔にも、いつしか笑顔が浮かんでいた。
男を喜ばせようと盛り上げながら、自分たちも楽しそう。
それまでずっと強張っていた男の顔にも、いつしか笑顔が浮かんでいた。
しかし、別れの時は迫っていた。
「お前たち…ありがとう。 俺は戦地に行ってから、 こんなに楽しかったことはないよ。 お前たちに会えて、本当に良かった。 …世話になったな。じゃ」 |
男が意を決して発とうとしたその時―
それは夢か、幻か―
少女が、バレエを踊っている。
一つひとつの動きを、目に映るものを、確かめるかのように。
やがて踊り終えた少女は、何も言わずに去っていこうとする。
男は―
言葉は交わせないまま、少女は去ってしまう。
突然、少女に向かって拍手を始める男。
万感の想いを込めて、天まで届けとばかりに思いっきり手を叩き続ける。
しかしその時、非常な爆音が辺りを飛び交い始める。
生徒たちにも聞こえる、戦争の音。
ついに、別れの時が来たのだ。
男は震える体を必死に抑え、覚悟を決める。
高鳴る轟音の中、白いハンカチを振って生徒たちに別れを告げる男。
死に行くその顔は、皆に会えた悦びに満ちていた。
生徒たちは男の命を各々の胸に刻み込んだ。
それは夢か、幻か―
少女が、バレエを踊っている。
一つひとつの動きを、目に映るものを、確かめるかのように。
やがて踊り終えた少女は、何も言わずに去っていこうとする。
男は―
言葉は交わせないまま、少女は去ってしまう。
突然、少女に向かって拍手を始める男。
万感の想いを込めて、天まで届けとばかりに思いっきり手を叩き続ける。
しかしその時、非常な爆音が辺りを飛び交い始める。
生徒たちにも聞こえる、戦争の音。
ついに、別れの時が来たのだ。
男は震える体を必死に抑え、覚悟を決める。
高鳴る轟音の中、白いハンカチを振って生徒たちに別れを告げる男。
死に行くその顔は、皆に会えた悦びに満ちていた。
生徒たちは男の命を各々の胸に刻み込んだ。
「忘れないから! 俺ら、絶対、忘れないからな!」 |