『慟哭は時を越えて』 稽古模様
お陰様で大好評に終わった舞台『慟哭は時を越えて』。この舞台ができあがるまでには、団員たちの様々な姿がありました。
その模様をお伝えします!
キャスト編
【その1】三下になれないキイチ
極秘軍隊の上官、精神に異常を来した者、手足の無い人間―
これまで実に様々な役を演じてきたキイチ。
しかし、そんな彼もまだ演じたことのない役柄があった。
それは、下っ端である。
「俺、三下役って初めてだからよ〜。どうしたらいいかわかんないんだよな〜」 いつもの軽い口調で言いながら、とりあえず近くにいた正太をいびるキイチ。 |
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そして、それを真に受けてびびる正太。 しのぶ「キイチ、びびらせるな! 正太も真に受けてびびるなよ、どうせ冗談なんだから!」 それからしばらく正太はビンボーゆすりがおさまらなかったそうな…。 |
【その2】代役も本役も…
一揆の団員は仕事をしている人が多いので、仕事が遅くなると稽古に間に合わないことも当然ある。
そんな役者に代わり、衣裳部のMaSaが代役を務めて稽古をした時のこと。
「開国してからこっち、…ふ、フドウジョウビョウヤクのした…」 「不平等条約のもと!」 「え?ふど、ふびょう、どう、じょう…」 台詞を噛みまくって稽古が進まない! |
そこへ本役の輝が仕事を終えて登場!
「待ってたよ、輝〜!もう、MaSaったら噛みまくりでさ〜…」 みんなの期待を一身に受け、さっそく稽古に入る輝。 「開国してからこっち、フドウビョウジョウヤクの下…」 「同じところで噛むなあ〜〜〜っ!!!」 |
言葉になじんでないのがモロバレだ〜。
何でもできる役者になるには何でも学ぶことが必要なのだ。
【その3】不良になれない少女
世の中に反感を持つ少女と警官の出会いから、この物語は始まる。 しかし、アニメのキャラクターのようにこれまで純粋に(?)生きてきた結実は、不良少女ナナの役作りに苦戦。すぐに素直な結実が出てきてしまう…。 |
「そんな純粋な目で警官を見るな!」
「カンタンに笑顔になってどーする!」
「それはナナじゃなくて結実だー!!」
「う〜ん、そうか〜。 ちょっとわかってきたかもしれないぞ?」 |
たくさんのダメ出しを克服して、本当は素直なのにひねくれてしまう、結実ならではの高校生ナナが誕生したのでした。
【その4】ナルシズムの闘い
函館戦争で敵味方に別れていた村橋久成(星野)と、新撰組副長・土方歳三(輝)が戦場で出会い、土方が村橋に日本の未来を託す、というドラマチックなシーン。
「ナルシストを極めてる」と言われる星野さん。
「舞台上ではかっこ良い」と言われる輝。
つまり両方ともナルシストってことじゃねーか!
そんな二人がにらみ合うシーンは、「いかにかっこ良くみせるか」の真剣勝負?
間をたっぷり取って「自分を魅せよう」とする二人。 しのぶ「そのシーンはメインじゃないんだから、さっさとやれ! 自分をかっこ良く見せることばっかり考えて…。ハア〜…」 |
そして村橋の腕の中で、息も絶え絶えになっていく土方、というシーンを何度やっても上手く出来ない輝。
しのぶ「こうやるんだよ!飲み込み悪いな〜!」 またまた演出からダメが。 シリアスなシーンなのに、輝は「自分の見せ場だ!」と思った瞬間にやけてしまうのだ。 そして死ぬ寸前の人間なのに、死に際で粘る。 |
「腹を打たれた人間がそんなに粘れるかよ!!」
ナルシスト根性はそう簡単には屈しないらしい…。
【その5】斬らねば切られる!?
今回出てきた小道具の中でも最も役者の動きに影響を与えたのが、刀。
一揆の芝居では初めてなので、みんな興味津々、挙動不審。
刀を扱うのが初めての正太に、丁寧に教えていく星野さん。
星野「どこから敵が出てくるか分かんないからさ、もっと、きょろきょろして…」
正太「キョロキョロ…こうっすか?」
星野「…ぷっ…あ、ごめん…」
苦労したのは正太だけではない。
総理大臣・黒田清隆を演じた輝は…
「おらおら〜!たたっ切ってやる〜!!!」
「きゃあああー!!」
「お助けー!!!」
おおっ、けっこう恐いぞ…と思ったら、演出のダメが。
しのぶ「輝、あんた、こうやってできないの?
…ほら、こうだって」
こっ…恐い、恐いっす〜!
とにかく刀を使い慣れてなきゃいけないのよね。
実生活で使い慣れてるわけはないが(慣れてたら犯罪だ)、そこは役者魂の見せどころ!?
次第に迫力を増していき、お客さんにとっても存在感のある役になったようです。
スタッフ編
【その1】熱すぎる男たち
一揆には今“相馬狂”が多発している。
多忙であまり稽古場に来られなかった技術チーフに代わり、みんなを突き動かし、取りまとめてくれたのは、装置チーフ・相馬の情熱だった。
「今回はこういうイメージでいこうと思うんですよ。
ここがこれこれを表していて、これはあそこのシーンに使って……。
皆さん、どうですか?」
「う〜ん、それならもっとこうしたら…」
何度もミーティングを重ね、出された案はすぐに形にしてくる。
目をギラギラと輝かせて仕事をする姿に周りの人間も突き動かされ、いつしか相馬を中心にみんなの気持ちはひとつになっていく。
そんな相馬に強く動かされた一人が、同じ装置部の坂庭。
相馬の意志をしっかと受け継ぎ、夜中(というより早朝)まで舞台装置を創り続ける。
そしていつしか
鼻血ブー
になったのであった…。
【その2】響=エンドルフィン
多忙な合間を縫ってようやく稽古場に顔を出した照明プランナー・響。
誰よりも彼女を待ち焦がれていたのは、照明オペレーターのあすかだった。
「エンドルフィ〜〜ン!!!」
どうやら響を見ると興奮して脳内麻薬エンドルフィンが分泌されるようになったらしい…。
やっと照明プランについて話ができたあすかはニッコニコ。
「照明っていろんなことができるんだね!すっご〜い!!」
そんな素直なあすかは、本番前に難しいきっかけが増えても、懸命に練習してやり遂げたのであった。
それができたのは、照明卓にひっそりと置かれていた響の台本を見たあすかの脳内からエンドルフィンが分泌されたせいだったのかもしれない。
番外編
吊るされた…
本番まで1ヶ月を切ったある日―
役者の必需品である台本を、正太は稽古場に忘れて帰ってしまったのである。
「あいつ〜、いい度胸してんな〜」
「どうする?」
「どうします?」
………
「吊りますか」
ということで、正太が忘れていった台本は、めでたく稽古場の天上から吊るされたのでした。
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