『Happy Home-幸せな家-』公演写真&ストーリー
※写真をクリックすると、新しいウィンドウで大きい写真が見れます。シュプレヒコールの中、一人佇む女性。
今まで、誰もこんなこと見向きもしなかったクセに。 お父さんは、いいの?これで。」
時は二十年前、原発反対の署名を集める公務員の良三。
彼のもとに、子供がもうすぐ産まれると、近所の豊子から知らせが届く。
良三は決意を新たにする。 「お前の生まれた日に、 お前の故郷では原発が動き始めた。 だからな、父さん、がんばるぞ。 なくすまで、絶対、あきらめないからな。」 |
数年後、小学生となった結希は真美と友だちになる。
だが、真美の父親は町の原発を推進する、町長・野口正の娘であった。
かつて友達同士であった良三と野口。娘の学習発表会を鑑賞しながら互いの意見を話す。
子供達が大きな古時計を元気良く歌う。
あの時計も本当に動かなくなる日が 来るんですよ。正兄ちゃん。」 |
原発の設計ミスを巡り対立する良三と野口。懸命に原発反対の運動を行う良三の元に一人の老婆が現れる。
良三と野口の娘達は豊子の娘・幸子と三人で仲良く学校生活を送っていた。
ある日真美は町長の娘である重圧を結希に話す。
「町長の娘って何?あたしは、関係ない。」
幸子の父・誠治は子供の将来の為、野口に誘われ原発清掃員として働く事を良三に打ち明ける。
「俺は・・原発で掃除してくる。」
学校の校則に不満を覚える生徒達。
結希は父親のように、クラスメイトに署名を募り、先生に訴えた。
しかし、自分と一緒に学校に意見をした友人達が、都合よく態度を変え、結希を一人にする。
彼女は良三に「もう、人なんか誰も信じない。」という哀しいセリフを吐く。その時...
原発で火災が発生。亡くなった作業員は誠治であった。
誠冶の葬式。野口が橋本家に挨拶に来る。
「こんな事になるとは、本当に残念です。」
崩れ落ちる母を見て、耐えかねた幸子。
「お願い、帰って!」
葬式から帰宅してきた野口の元に、真美が帰ってくる。
真美はこれまで我慢してきた思いを全て吐き出す。
「パパは、どうして原発をここに入れたの?」
お通夜の席。結希と良三が誠治との思い出を語り合っていたその時...
「お父さん、どうしたの?お父さん!」
良三の病は脳梗塞。突然の事に動揺する家族。長い闘病生活が始まった。
結希も高校生になった。良三は懸命にリハビリを続けていた。
「お父さん、あたしも頑張るから。何年かかっても。」
橋本家。幸子は学校で言われた事を母に告げる。
「学校で変な事言う奴いるんだ。お父さんの賠償金あるんだろって。」
「父さんはあんたの為に働いたんだから、あんたもそんな連中に負けるんでない!」
一方リハビリ室では野口が現れる。リハビリを嫌がる良三を歩かせるために、野口はわざと挑発する。
良三は一歩、また一歩と、野口の元に歩き出す。 「そうだ...そうやって、いつもやってきただろ。」 |
病院の受付。良三の妻・綾子と野口の妻・まゆみが互いの家族の事を話し合う。
「つくづく思ったんです。周りの人の気持ちがありがたいって。」
その時、大きな揺れが。地震だ。2011年3月11日午後2時46分。
「福島、茨城、栃木、群馬、震度六...?」
「宮城...震度、七。」
「東北が...ひどいことに...。」
「...北泊は...原発は?」
2012年秋、良三一家は原発集会に赴く。
「父さんの目標は、原発のない世の中だったんだから。
それが今、ようやく、動き出したんだもの。嬉しいに決まってる。」
「ばかみたい。人のためにばっかり生きて。」
「何言ってるの。あんたのためよ。」
原発反対のコールをあげる人々達。
そこで、結希は良三のこれまでの思いを全て知るのだった。