「また観たい！」の声に応えて
オムニバス学校Ⅱ（再演）
第9作 作／橋田志乃舞現在(いま) この時をみつめて…
上演：1998年2月15日（日）
会場：ターミナルプラザことにPATOS
ごあいさつ
脚本 橋田志乃舞マリリン・モンローの名前を聞いたことがない人は、そういないだろう。映画を観ていなくとも、グラマラスな艶姿に半開きの真赤な唇、輝くばかりの金髪の姿は知っているはず。実は私は、５０年代アメリカの最高の人気を博したこの女優の大ファンである。
私が脚本を書く場合、映画から学ぶことが多い。小さい頃は「日曜洋画劇場」を観ながら、その見所や批評を父から聞くのが好きだった。「早く寝なさい」…母の小言も、共働き家庭で両親との接触の少なかった私には、嬉しい夜だった。こうしてすっかり映画バカになり、今まで観た本数は、数えきれるものではない。
マリリンに出会った時、写真でしか知らなかった昔の女優になぜか懐かしさを覚えた。活き活きとした瞳とは逆のどこか寂しげな、ふと息をのむようなあの微笑み。数多くのアメリカの女優を知れど、あれほどスクリーンの中で自分の魅力を知り抜き、魅惑的に動く女性を私は知らない。そして、その女性が学歴がないことを苦にし、頭の弱い金髪グラマー役しか来ないことを悩み、恋する男性においても知性を求め、後に薬物中毒で死んだという一生を知った時、私のマリリン熱は沸騰した。
最近、マリリンの死因について、新しい証言があったことをご存じだろうか？ 死後３０年近くもたって発表されたその「真実」は、アメリカ社会に大きな波紋を投げかけた。マリリンは、時の大統領の弟で、当時司法長官でもあったR．ケネディと言い争っているうちに、何らかの事故があって死んだというのである。ケネディ兄弟とマリリンが愛人関係にあったこと自体は周知の事実だろうが、マリリンの死に際に立ち会ったとなると、話は別である。これまで「永遠に謎」として片づけられてきた彼女の死を、こともあろうに司法長官が、自己保身のために国家権力を使ってまで隠してきたということになるからだ。しかも彼らは今も教科書に載っているアメリカの「国民的ヒーロー」なのである。
これについて、真実を追究したジャーナリストが言っている…「それがたとえどんなに自国の過ちを明らかにすることになろうとも、真実は真実として歴史に残すことが、次の世代の子供たちに私たちが残せる本物の宝ではないのか。人一人の命について、こうも簡単に隠蔽されるこの国の政府の歪んだ思想の、一体どこに自由があるというのか。」
私は思う。
ハイスクールで銃器による殺人が起こる病めるアメリカの子供たちに何を言おうと、こんな政治を許しておく大人の言葉なぞ、彼らには何の意味も持たないだろう。そしてそれは、生徒による教師の殺人が起こる日本においてもまた同様だ。戦争という自国の過ちについて、いまだ認めようとはしない文部省。その下で今日も実際何に使うのか分からないまま方程式ばかりたたきこまれ、それでも必死に生きようとする多くの学生が、マリリンのように傷つきながら勉強していくのだ。そうだ、あのどことなく影のある、それでいてたとえようもなく優しいあどけない笑い方は、現代の傷ついた生徒たちに似ている。
頑張れ、多くのマリリン達。あなたたちは、誰もが否定することのできないたくさんの魅力を持っている。どんなことがあろうとマリリンは、それでも生きた。自分はボロボロになりながらも他人に優しくあろうと努めた。だからこそ、死んでもなお、大衆に求められ続けている。
「オムニバス学校Ⅱ」を、現代を必死になって生き抜こうとする多くの方々への、私からの讃歌なのだと観て頂ければ本当に嬉しく思います。
本日はご来場下さり、誠にありがとうございました。
ストーリー＆キャスト
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第１話「紙ひこうき」戦争末期。特攻隊の中尉と疎開してきた一人の少年とのたった一日の思い出。少年／橋本真美 青年／菅生宏明 下士官／中川道恵 第２話「飛べないニワトリ」第二次世界大戦中、足の悪い少女と飛べないニワトリの友情とその家族。少女／如月未歩 母／柴田英梨子 姉／中川道恵 少年Ａ／橋場輝 少年B／木村勝美 先生／野村昌弘 ニワトリ／野村昌弘 第３話「初恋」現代。ある男子校演劇部の合宿に突然訪れた旧日本兵の物語。生徒Ａ／菅生宏明 生徒B／野村昌弘 生徒Ｃ／竹田幸平 生徒D／ＭａＳａ 男／橋場輝 女学生／山北エリカ |
スタッフ
演出／野村昌弘舞台監督／橋田志乃舞
助舞台監督／如月未歩
照明／成田真澄（㈱ほりぞんとあーと）
音響効果／広岡誠、三上文孝
衣裳メイク／柴田英梨子
小道具／橋本真美、山北エリカ、佐々木未来
装置／橋場輝
制作／富堂保則、松岡享、石川美希子、99式神話
協力／水島格子（演劇集団なたく）
衣裳協力／松竹衣裳㈱